不動産マメ知識
不動産に関する基礎知識、豆知識、四方山話(よもやまばなし)などを
皆様にとって何らかのお役に立つことができたら幸いです。
少しずつではありますが、マメに更新・追加できるようがんばりたいと思います。
なお、このコーナーはあくまで当事務所が調べた内容を記載しているものであり、
十分吟味はしているものの、正確無比な知識や情報ではないことをご了承下さい。
○不動産の定義
不動産とは「土地及びその定着物」をいうと、
民法第86条第1項で定義されています。
すなわち不動産とは、土地や、その土地に定着している物です。
定着物とは、建物や立木、橋、石垣などです。
では、山の杉や松など、いわゆる立木はどうでしょうか?
答えは、「立木ニ関スル法律」という特別法によって不動産として認められています。
○問題点など
(1)建物については、どの時点で建物と言えるのか。
特に建設中の建物
(2)売買契約に際し、当事者間で定着物の取扱をはっきり取り決めていないためトラブル。
例えば、土地売買に際し、建物の外に設置した機械などの取り扱いなど。
(3)担保権の及ぶ範囲の問題
例えば母屋に符合(民法242条)しているか否か、従物かどうか(民法87条1)などの問題もある。
不動産の表示に関する公正競争規約では、面積は平方メートル(m²)を単位として表示することになっていますが、
古い契約書はもちろん、現在でも未だに坪単位で取引しているケースも多く見られます。
したがって、ご質問のように、坪単位・平方メートル単位の換算方法が問題になるわけですね。
ではその解答ですが、
「0.3025」が換算数値です。
この数値で掛けたり、割ったりすることで、平方メートルから坪へ、坪から平方メートルへ換算できます。
A.100平方メートルであれば、100に0.3025を掛けて30.25坪。
100m² × 0.3025 = 30.25坪
B.100坪であれば0.3025で割って330.57平方メートル。
100坪 ÷ 0.3025 = 330.5785・・・ ≒ 330.57m²
では、「0.3025」の根拠ですが、
明治のころ、度量衡を統一するとき、曲尺(かねじゃく)を基準にして尺の長さが決められ、
「1メートルの33分の10を1尺とする」ことになったのだそうです。
そこから次のように計算して行くと、ぴったり「0.3025」の数字が得られます。
すなわち、
1尺(しゃく)=(10÷33)m
1間(けん)=6尺=(60÷33)m=1.81818・・・m
1坪=1間×1間=(60÷33)m×(60÷33)m=(3,600÷1,089)m²
=3.30578123・・・m²
1平方メートル=(1,089÷3,600)坪=0.3025坪 (ぴったり割り切れます)
したがって普通はこの数値を使い、平方メートルと坪の換算をするわけです。
なお、私が社会人になってすぐ入った不動産会社の先輩は、
「3.30578」の数値を使うように教えてくれましたが、
上記計算式の過程で出てくる数字であり、ほぼ一致します。
(当時は何のことやらわからず使用していましたが・・・)
また、古い契約書のなかには、
「1坪(3.3m²)当たり・・・」のような記載がよく見られます。
これも大きく異なる数字ではないのですが、
面積が大きかったり、単価が高い土地などの場合には、総額に相当な差が出ることもあり、
契約書を重視するか、上記の換算数値を重視するかで、
問題になるケースも見受けられますので、注意が必要です。
1坪の換算について載せたところ、さっそく、
「坪換算の説明の中で、1間は1.81818mと記載されていますが、違う場合もあるのではないですか?」
との質問がありました。
答えは、確かに「違う場合もあります」です。
坪換算の説明の中でも記載しましたように、
明治時代の度量衡の統一で、
1尺=(10÷33)m、1間=6尺 と決まったのであり、
文献によれば、1間は概ね、太閤検地の時には6尺3寸、江戸時代は6尺1寸としていたようです。
さらに、地域によって異なることもあり、特に日本家屋にあっては、
東日本を中心とする江戸間は1間=6尺ながら、
西日本を中心とする京間は1間=6尺5寸(約1.97m)です。
ちなみに、その際の畳の大きさは、
江戸間が5尺8寸×2尺9寸=約1.76m×約0.88m
京間が6尺3寸×3尺1寸5分=約1.91m×約0.955m
です。
余談ですが、私がまだ駆け出しの頃、
県内のある田舎の方の古い日本家屋の調査を行ったとき、
この京間についての知識がなかったため、
建物内部の間取りについて、畳や襖の数を目安に1間=約1.82mで書き取ったため、
建物外部を巻尺測定した結果とどうしても合致せず、本当に困ったことがありました。
最後は、畳を測定し約1.9mほどあり、所有者の方から京間だよと指摘され、
恥ずかしい思いと、勉強不足を痛感し、また秋田県内にも京間があることを知りました。
なお、建物登記の際の建物図面や各階平面図及び設計図書では、
土地家屋調査士や設計士によって、
1間を1.82mとしている方と、1.818mとしている方の両方が見受けられます。
不動産登記規則99条と不動産登記事務取扱手続準則68条により、
土地の地目は、主たる用途により、23種類に区分して定めるものとなっています。
宅地・田・畑・山林・原野・・・この5つは皆さんも良く見かけるのではないでしょうか。
公衆用道路・墓地・・・なども見かける機会があるかと思います。
牧場・用悪水路・井溝・ため池・池沼・堤・保安林・・・などは農林業関係の方なら見かけると思います。
学校用地・境内地・公園・鉄道用地・鉱泉地・・・普通の方だとあまり見る機会はないかもしれません。
塩田・水道用地・運河用地・・・私もまだ実際には出会ったことがありません。
以上の22種類のいずれにも該当しない土地が、すなわち「雑種地」とされています。
では実際にはどんな土地でしょうか。
いろいろあり得るのですが、
原野などを粗造成した資材置場などの土地が、分かり易い例でしょうか。
これに対し、「14条地図」とは、不動産登記法14条1項で定める正確な地図のことです。以前は、同法17条で定められていたので、「17条地図」と覚えている方も多いと思いますが、2005年3月の同法改正で呼び名が変わっただけです。1951年から各市町村が行っている地籍調査などを基につくられています。
なお、緯度や経度などを基準とした座標で作られたものであり、例えば災害などで地勢や形状が全く変わってしまっても、14条地図があれば、元の境界を確定できることになります。上記の公図は大半が土地の位置を示す程度に過ぎないのに対し、14条地図では土地の各筆の形状・規模が特定されていますので、我々不動産鑑定士にとっては、不動産調査に際し、大変ありがたい図面の一つです。
なお、不動産登記法の第14条の条文は次のとおりです。
第14条
第1項 登記所には、地図及び建物所在図を備え付けるものとする。
第2項 前項の地図は、1筆又は2筆以上の土地ごとに作成し、各土地の区画を明確にし、地番を
表示するものとする。
第3項 第1項の建物所在図は、1個又は2個以上の建物ごとに作成し、各建物の位置及び家屋番
号を表示するものとする。
第4項 第1項の規定にかかわらず、登記所には、同項の規定により地図が備え付けられるまでの
間、これに代えて、地図に準ずる図面を備え付け ることができる。
第5項 前項の地図に準ずる図面は、1筆又は2筆以上の土地ごとに土地の位置、形状及び地番を
表示するものとする。
第6項 第1項の地図及び建物所在図並びに第4項の地図に準ずる図面は、電磁的記録に記録する
ことができる。
すなわち、明治10年〜20年代初め頃、短期間に測量して作られた土地台帳に土地の面積が書き込まれ、それを基に昭和35年の登記簿と土地台帳が一元化されることになり、現代の登記簿に移行されたのですが、
明治の頃の測量・計測に用いた資材は、縄などに一定の間隔で結び目を作った簡易なものだったようです。
このため、 a.縄は強く引けば、多少延びて、実際の長さよりも小さく計測されることになりますし、
またb.結び目の間隔を意図的に短くしたり、長めにしたりしたケースもあったようです。
これにより、例えばaの時は、実際の地積(面積)より少なく記載されるので、
現在の正確な技術で測量し直せば、登記地積より実際面積が多くなりますので、
これをもって「縄を強く引き延ばして測定した結果」=すなわち「縄延び」と言うようになったようです。
反対に実際面積が登記地積より少ない結果を、逆ということで、「縄縮み」と言われています。
ところで、このように登記地積と測量結果が異なる「縄縮み」「縄延び」が起こる原因には、
どのようなものがあるのでしょうか。
まず、先程のように、(1)稚拙な測量技術によるもの、(2)税逃れなどのため意図的な測量によるもの、(3)境界標の移動(工事中に誤った場合や意図的なもの)によるものなどが考えられます。
なお、最近の測量技術に基づくものでも、例えば分筆に際し、残地の方の筆が依然として差し引き計算で処理されている場合も多く、この場合には元々の登記地積が前記のよう原因で縄延び・縄縮みの土地であったならば、それを引きずることになるので、縄延び・縄縮みとなります。
なお、時々、縄延びが大きく、分筆し残地を差し引き計算したらマイナスとなってしまうケースも見られます。ただ、さすがにマイナス地積の登記は認められないので、実測地積に基づく地積更正がされ分筆されます。
いずれにしても登記地積(面積)は常に正しいものとは限らないので、該当する土地の歴史や沿革を良く調査し、場合によっては境界確定のうえ測量することが重要です。
実は私もはっきりわかっておらず、調べてみましたので、ご報告致します。
「用悪水路」:田畑に水を注ぐための農業用水路(灌漑用水)及び、悪水排出用の水路。
「井溝」:田や村落の間にある通水路で、単に落し水や湧き水などを排泄する通水路。
また、
「ため池」:田畑に水を注ぎ、土地を潤すための用水貯水池。
「池沼」:田畑に水を注ぐための農業用水路(灌漑用水)以外の水の貯留池。
のようです。
この定義からすれば、農業用が「用悪水路」と「ため池」で、それ以外が「井溝」と「池沼」ということになりますね。
これについては、(1)正常価格と限定価格(正常賃料と限定賃料)、(2)公的評価の一元化、(3)依頼目的と鑑定評価額に分けて考える必要があると思います。
まずは、(1)正常価格と限定価格について。
正常価格とは、鑑定評価基準によれば、「市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格」となっており、すなわち上記の一物一価の法則のとおり、完全競争が行われれば成立するはずの価格と言えます。ただ、ここで注意すべきは、例えば鉛筆などのように同質の品が多数あるのとは異なり、分譲地など数区画単位で同質物件が存在する例外を除き、土地は形状・規模・地勢・規制の違いなど、人間と同様に個々の顔をもっているということです。(ここに不動産鑑定評価の必要性と、またその難しさがあります。)
一方、限定価格とは、「市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格」です。
何だかとても小難しく定義され、わかりづらいとは思いますが、例えば、自分の土地が一部欠けたような不整形な時に、隣の土地を購入することによって、その不整形が解消されるケースを考えるとよくわかると思います。通常の人達(一般市場)以上に高く買う価値(市場価値と乖離)があります。すなわち限定された市場での価値(限定価格)ということになります。ちなみに、「隣の土地は借金してでも買え」という諺(?)もあります。
以上、不動産には正常価格と限定価格がありますが、これは「一物一価」の経済法則と何ら相反するものではないことは、おわかり頂けたかなと思います。
機会があれば、いつか限定価格についてもう少し詳しく述べたいと思います。
実は、かつてこの3者は確かにバラバラだったのです。しかし、次第に公的評価の一元化が叫ばれるようになり、(その時代背景などは要望などありましたらいつか述べたいと思います。)、平成4年から国税局相続税路線価は公示価格の80%、平成5年から固定資産税評価額は地価公示の70%を目途とした評価になっています。したがって、一見バラバラに見える3者の価格も、標準的画地であれば、相続税路線価÷0.80、固定資産評価額÷0.70で、いずれもほぼ公示価格と一致することになります。なお、固定資産税評価額は、かつて実勢価格の30%程度に止まっていたこともあり、一挙に税負担が重くなることを避けるため、負担調整率を導入し、課税標準額(これに税率を乗じて税額が決まる)を抑え徐々にアップするようにしました。このため、地価が下落しているにもかかわらず、税額が上昇するという事態が長く続き、困惑する方や怒る方が多く見られました。
以上、公的評価は根底で実は一致していることがわかって頂けたかと思います。なお、公示価格と実勢価格との関係についても、いろいろ質問が多いのですが、詳しくは別の機会しますが、私の個人的意見を簡単に述べると、実勢価格を「どう把握するか、誰がどう決めたのか」に関わる問題であり、また公示価格は「ある価格」なのか「あるべき価格」なのかにも関わる問題ですが、本来的には公示価格=実勢価格であると思います。
「土地登記はあるが、公図に当該土地(地番)が見当たらない」という相談がありました。
一般の人は「え!そんなことあるの?登記しているんでしょ。それじゃ、どこに土地があるか確定できないじゃない。登記はあるのに、まるで幽霊のような状態?なんのための登記?」と思うのではないでしょうか。
実はこれ、意外とあるのです。私の数少ない経験だけでも、これまで3回ありましたので、これで4回目の遭遇となります。いずれも確かな原因はわからずじまいでしたが、たとえば極めて古い旧公図(いわゆる絵図面)などは、物によっては画地や地番が見えない箇所があるほどボロボロなものもあり、絵図面からマイラー図面へ、マイラー図面からコンピューター化の過程で、消えてしまったものもあるのかもしれません。
このため確定できず非課税扱いになっている土地もあります。
通常取引に際しては、不動産業者や司法書士などが係わりますので、このような土地を一般の人が間違って購入するなどのトラブルはほとんどないと思われます。ただ私が遭遇したなかには、抵当権を設定し差し押さえたものの、物件が実在しなかった(あるいは特定できなかった)ケースがありました。ある程度不動産知識のある金融機関でさえ、問題に巻き込まれることもありますので、法務局調査や現地調査はくれぐれも怠らず、また不動産取引には必ず不動産業者や司法書士などの専門家を利用されることをお奨めします。
土地の境界紛争について、どんな解決手段があるかご存じですか?
もちろん、当事者が話し合って合意に達したならば、境界標を設置、測量して地積測量図を作成し、法務局で地積更正すれば良いわけです。
ただ、当事者間による紛争解決はなかなか容易ではなく、最終的には公的機関に頼ることになりますが、果たしてどのようなものがあるか。
まず最初に思いつくのが、調停制度ではないでしょうか? 費用的にも今後の人間関係の面でも、裁判までは行わずにできれば・・・と考える方が多いようです。
ただ、裁判所の調停では、境界確定のための申し立てはできないことになっています。これは、土地の境界は公的なものであって、民間での話合で決めることは許されないという考え方のようです。したがって、これまでは「境界確定訴訟」によるしかなかったのですが、時間や費用がかかります。
そこで、迅速・適正な解決策が検討されてきましたが、平成17年4月に不動産登記法の一部を改正する法律により、筆界特定制度が創設されました。
「筆界特定制度」
筆界特定制度とは、各地の法務局長が専門家を筆界調査委員に任命し、境界紛争の当事者から申請があった場合、法務局に新設する「筆界特定登記官」が筆界調査委員の意見を参考にしながら境界を特定するというものです。
なお筆界特定とは、新たに筆界を決めることではなく、実地調査や測量を含む様々な調査を行った上、もともとあった筆界を筆界特定登記官が明らかにすることです。したがって、この「筆界特定」には、新たな筆界の形成、確定までの効力はなく、よって、筆界特定の結果に納得することができないときは、後から裁判で争うこともできます。また、土地の所有権がどこまであるのかを特定することを目的とするものではありません。例えば時効取得の問題などは、筆界特定制度とは直接関係ありません。
ちなみに、私が目撃した筆界特定制度を利用したケースとしては、次のようなものがあります。
ほんの僅かな違い(境界線で数cm・面積で数m²)のため、「境界確定訴訟」を行うことは費用対効果からみて、当事者双方にメリットが無く、同制度を利用したものがありました。(但し訴訟事件は、費用対効果などより気持ちの問題とする当事者も多いようですが・・・)
また、境界及び時効取得が争われていたケースでは、まずは筆界を特定しないと、どの範囲が時効取得なのかわからず、したがって分筆登記等もできないため、筆界特定制度を利用し、その結果と現況利用範囲との相違を確認のうえ、時効取得等につき当事者双方が納得できないようであれば調停を行う(この場合は、境界確定目的ではなく、所有権の範囲確定を目的とする調停なのでOK)というものでした。
以上、筆界制度に興味がある方は、法務省の下記などが参考になるかと思います。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji104.html
なお、ほかに境界紛争解決手段としては、土地家屋調査士会などによるADRもあります。
*ADR=裁判外紛争解決手続、「Alternative(代替的)」「Dispute(紛争)」「Resolution(解決)」
令和5年7月14からの短時間大雨により、秋田市中心部は甚大な被害を被りましたが、その際に、あまり聞き慣れない「内水氾濫」との報道に接し、ちょっと調べてみました。
内水氾濫
・「洪水」とは水害の一種で“河川の氾濫”を指し、堤防を境に河川が市街地の外側にあることから「外水氾濫」。
・これに対し、堤防の内側、すなわち市街地内を流れる側溝や排水路、下水道などから水が溢れる水害を「内水氾濫」と呼びます。
・内水氾濫は、雨水の排水先の河川が高くなったことが原因だったり、雨量が下水道の排水能力を超過したことが原因、また低地や窪地等の地勢が原因だったりします。
昔は雨水が地面に浸透していましたが、特に都市部では大半が舗装されたことで、雨水がほぼ全て排水溝や低地等に流れ込むことで、河川近くでない地域でも、氾濫が突然起こるリスクが高まっています。
・内水氾濫の原因が、雨水の排水先の河川が高くなったことが原因の場合は、河川改修により対策は可能(予算等の問題はありますが・・・)ながら、下水道処理能力や地勢等に起因する場合は、対策も容易でないと思われます。
・近年は異常気象からゲリラ豪雨などが多発しており、いつどこで発生してもおかしくないし、連続して起きる危険性もあります。(実際、本県の五城目町は令和4年・5年と連続して被害にあっています)
*参考;防災科学技術研究所(11.内水氾濫) https://dil.bosai.go.jp/workshop/01kouza_kiso/11naisui.html